prayers anthem 孤独といふこと

2025年2月13日

「これまでに抱きしめてきた、たくさんの祈りが、貴方に届くように。」

 そんなふうに記すことが、精一杯になる。それが孤独といふこと。それが、孤独ではないといふこと。

 どれだけ月がまるくて可愛くても、明るく大地を照らしていても、空はずーっと繋がっているのに、貴方にはその灯は届かない。

 光は灯を奪っていき、大地は枯れていく。見たくないものは封じ込められ、常に気持ちの良い認識で時は流れていく。

 暗い暗い夜を忘れ、明るい明るい昼を忘れ、美しい手は誰かの心臓を握り潰しぐにゃぐにゃとすり潰していく。ぐちゃぐちゃになった心から溢れ出す涙と血は、貴方の目には映らない。もしも、貴方の大切な人が、貴方の鳩尾に手を突っ込み、幸せそうにニヤニヤ笑いながら、貴方の心臓をぐにゃぐにゃと手でこねくり回している、真正面のその人の顔を、見る気持ちを、貴方は想像できるだろうか。恐ろしい恐ろしい夢は、夢ではなく、現実の方がもっと恐ろしく、痛く、怖い。

 イメージも想像も、到底追いつかないほどの恐ろしい現実は、この世界のあそこに、ちゃんとあって、貴方が腰を上げて、足を踏み出さないことを、大地は知っている。

 想像もできない未来を手繰り寄せていく力を失った貴方の手に宿るぬくもりは、恐ろしく冷たいぬくもりとなって、また新たな生命に受け継がれていく。

 心臓がぐちゃぐちゃになっていても、それでも生きていかなきゃならない者たちは、祈りを歌うしか、できることなんてないけれど、この世界の片隅で灯る祈りの歌は、大きなアンセムになって、大地も歌い出す。灯はそれでも続いていく。いのちは絶えず、忘れない。そんなことが、ありますよふに。

 それでも、そんな恐ろしさにまだ飲まれていない素敵ないのちたちが、明日もこの世界のどこかで、素敵な日を迎えられますよふに。